HTLV−Tについて

1.HTLV−Tとは

HTLV−TとはHuman Adult T Cell Leukemia Virus-Tの略語で、日本語訳は、 成人T細胞白血病ウイルスで、成人T細胞白血病(ATL:Adult T Cell Leukemia) を起こす原因ウイルスです。
このウイルスは1981年に日沼頼夫教授により発見されました。


2.成人T細胞白血病とは

まず白血病とは血液のガンといわれ、白血球が何らかの原因でガン細胞化し、これが 異常に増殖し、白血病細胞になる病気です。
その白血病のひとつに成人T細胞白血病があます。
この病気の特徴は、40歳代〜60歳代に多く発病し、白血球の一種のT細胞がガン化し、患者の多くは発病すると急速に悪化し、患者のおよそ50%は半年以内に、残りの殆ども 2年以内に死亡します。
その他の白血病に有効な治療薬も現在の医学ではこの病気には全く効き目がありません。
この病気で亡くなった有名人では女優の夏目雅子がそうです。


3.HTLV−Tのキャリアとは

ご質問を下さった方は献血をし、HTLV−Tのキャリアとの通知を受けた訳ですが、これは次のように解釈します。
HTLV−T陽性が即、成人T細胞白血病ということではなく、大部分の人々はHTLV−Tを体の中に持っていても発病しません。これを専門用用語で、持続感染者(キャリア)と呼びます。
すなわち、HTLV−T感染者のうちのほんの一部の人だけが発病し、殆ど大部分は、何の発病もなくその一生を終わります。


4.HTLV−Tはどのようにして感染するのか?

@母児間垂直感染:HTLV−Tキャリアの母親の母乳の中には白血球の一種のリンパ球が含まれており、このリンパ球のなかにHTLV−Tが存在し、この母乳を飲むことにより感染します。

現在では、お産の際にHTLV−Tキャリアの検査を行い、母親がキャリアであれば、赤ちゃんには母乳を直接飲ませるのではなく、母乳を取りこれを一度−20℃で凍らしてから、再びこれを温めて溶かすことにより母乳中のHTLV−Tは死滅するので、母親から赤ちゃんへの感染は100%防止されています。

A夫婦間水平感染:夫がHTLV−Tキャリアの場合、性交時に夫の精液中のリンパ球に感染しているHTLV−Tが妻へ感染することを言う。この感染例は非常に少なくあまり問題には有りません。

B輸血による感染:献血の際の検査のひとつにHTLV−T抗体検査を行い、HTLV−T抗体を保有するキャリアの血液は輸血には使用しません。そのため現在では輸血による感染は全く有りません。


5.日本人でHTLV−Tキャリアはどのくらいいるのか

キャリアは現在、日本には百万人くらいいると推定されています。
HTLV−TはHTLV−Tを保有するキャリアの母親から乳児に母乳を飲ませることにより、感染し、先祖代々から現在まで家族の中で受け継がれてきました。
このキャリアは全国に散在しますが特に沖縄、九州、四国に圧倒的に多く見られます。これは、日本に先住していた縄文人に受け継がれ、弥生人にはキャリアがほとんどいないということです。
そのため、弥生人を祖先にもつ京都にはキャリアは滅多に見られません。


6.それではどうすればよいのか

成人T細胞白血病は毎年500人前後が発病し、キャリアの1000〜2000人に1人ぐらいが発病する程度です。
すなわち、HTLV−Tキャリアの人が全員成人T細胞白血病になるのではなく、大部分はHTLV−Tと共存し成人T細胞白血病を発症しないでその一生を終わります。
このことを年頭に置かれあまり心配することはないと思いますが、一度、大きな病院の「血液内科」で献血し、HTLV−Tキャリアの通知があった旨を伝え、ご相談されればよいでしょう。

次ぎに献血ですが、血液センターから通知を受けますと二度と献血はできませんので、以後の献血は控えて下さい。

最後に、忠告ですが、HTLV−Tキャリアであることを周囲の人達に話さない方が良いでしょう。なぜなら、すべての人がこのウイルスや病気のことを今だ正しく理解していないことから、変な偏見の目で見られ阻害されることがあります。
この事はご夫婦二人だけの秘密にしておくべきです。
主人から奥さんに病気が感染することは殆どありませんし、仮に感染しても問題は殆ど起こりません。出産されても母乳は一度凍らせて飲ませれば子供への感染はありません。

血液の鉄人

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