Rh陰性の女性の妊娠出産について

 Rh陰性の女性が初回妊娠でRh陽性の子供を妊娠すると、この第一子の分娩時に胎盤剥離により胎児の赤血球が母親の血液中に混入し、免疫反応が起こり母親の体内に抗D抗体(Rh陽性の赤血球を破壊する物質)が作られます。
 このRh陽性の赤血球を破壊する物質抗D抗体は母親がRh陰性のため母親へは何の悪さもしませんし、第一子の胎児にも何の影響も与えません。
 問題になるのは第二児を妊娠し、この胎児がRh陽性の場合、母親の胎盤より抗D抗体が胎児に侵入し、抗D抗体は胎児のRh陽性の赤血球に反応し、赤血球を破壊します。
 この時、溶血反応(赤血球が壊れる)が起こるため、胎児は強い貧血症状を起こし、分娩後数時間で黄疸が出現します。 胎児をこの状態のまま放置すると核黄疸を起こし脳に障害を与え、悪くすると死亡します。

 この様にRh陰性の女性は妊娠すると脳に障害のある子供を生む。
 出産した子供が黄色くなって死ぬ。
 と言われ、一部週刊誌などがおもしろおかしく取り上げたことが、まことしやかに一人歩きし、Rh陰性の女性を世間が偏見をもって見る事になっています。

何の心配もありません。

 以下の文書をじっくり読み安心して下さい。

 @第一子を妊娠出産後24〜48時間後にRhガンマーグロブリン(ローブリン:メーカによって商品名が異なります)を母親に注射します。
 このRhガンマーグロブリンは母親の体になんの影響も与えず、母親の体内に抗D抗体が作られるのを防止しする働きがあります。
 このRhガンマーグロブリンを注射することにより第二児を妊娠しても核黄疸や溶血反応を起こしません。
 そして第二児以後の出産後も同様にRhガンマーグロブリンを注射します。この注射により次に妊娠する子供に何の影響も与えず安心し妊娠出産することができます。

 A仮に既に母親の体内に抗D抗体が作られており、妊娠、出産後の子供に溶血反応や黄疸が起きても、Rh陰性の血液で交換輸血を行い子供の血液を入れ替える治療法で子供を救うことができます。

 B質問者はRh陰性で結婚する男性がRh陽性との事ですが、生まれる子供は75〜100%の確率でRh陽性と考えられます。
 従いまして、初回の妊娠出産後@で述べましたRhガンマーグロブリンを注射することにより何の問題もなく対処可能です。
 この治療法は産婦人科のある日本国内のほとんどの病院で行われておりますので何の心配もありません。

 ひとつだけ注意が必要ですが、一度でも妊娠し出産に至らず流産あるいは人工中絶をを受けその時にRhガンマーグロブリンを注射を受けていない場合は、母親の体内に抗D抗体が作られている可能性がありますのでRhガンマーグロブリンの注射は無効です。
 この場合は最初の出産でも溶血反応や黄疸が起こる可能性がありますので、Aで述べました治療法で対処することになります。
 いずれにしましても妊娠して病院を受診しますと、これらの治療法に必要な検査を実施し万全の対策ができるように現在はなっていますので何の心配も要りません。

 安心して、結婚され丈夫なお子さんをたくさん生んで下さい。

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