血球貪食症候群について

ご質問の病名は血球貪食症候群ではなく白血球貪食症候群ではないかと思われます。

最初に白血球の働きを簡単に説明をしますと、白血球は顆粒球・リンパ球・単球の三種類に分類出来それぞれ異なった働きをしています。
また、顆粒球には好中球・好酸球・好塩基球があります。
体の中に細菌が侵入すると、その情報が顆粒球に伝わり、顆粒球が侵入場所に行き(遊走)、細菌を有害な侵入者と判断すると、細菌にくっつき(粘着)捕まえます。

顆粒球が細菌を食べる(貪食)と、顆粒球の中から顆粒が壊れリゾチームと呼ばれる酵素が出されます(脱顆粒)このリゾチームは細菌を溶かす働きがありますのでこのリゾチームを浴びた細菌は溶かされ消化され無毒化(殺菌)されます。
このように顆粒球は遊走・粘着・貪食・脱顆粒・殺菌は働きを総合的に行い、我々の体を細菌から守る働きをしています。
そのため顆粒球が何らかの原因で体の作られなくなると、細菌感染により生命が脅かされることになります。
顆粒球がある一定以下の数になるといくら抗生物質を使っても細菌を殺すことが出来なくなります。

すなわち抗生物質は顆粒球がある一定の数がないと効きません。
特に細菌を無毒化する働きを中心的に行うのが顆粒球の中の好中球です。
白血球が細菌を貪食する働きが低下し色々な病気が複合して起こるのが、白血球貪食症候群と考えられます。
そのため白血球の一種の好中球が減少するとそれを一時的に補給するのが白血球(顆粒球)輸血です。


それでは、“はこさん”の質問にお答えします。


1:本当に好中球は8時間しかもたないのか

白血球の寿命は体の中でも4〜5日と非常に短く、体の外に取り出すと、24時間程度しか白血球の貪食機能が持ちません。
そのため、白血球を採取しますと8時間以内に輸血しているのが現状でしょう。
また、白血球製剤は血液センターでは取り扱っていないために病院で患者の家族や知人から採血し患者へ輸血する方法がとられています。
白血球製剤を血液センターが取り扱わない理由はこの製剤の効き目が疑わしいことから、正規の血液製剤として厚生省の許可を得ていないのが実情です。

それでは、白血球輸血の必要な患者に対処するのでしょうか?
現在は、G−CSF(顆粒球コロニー刺激因子) GM−CSF(顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子)と呼ばれる薬が使用され、この薬を注射することにより顆粒球を患者の体内で作り出すことが可能となりましたので、白血球輸血はあまり行われなくなり、よほど特殊な症例にしか使用されませんが、“はこさん”の知人の子供さんが特殊な症例か否かは分かりかねます。


2:どうやって、その人を探したらよいのか(あまり詳しくわからないので、分かる範囲でお答えします)

ABO・Rh血液型が同型であれば問題ありませんが、血液を提供する人に、B型およびC型肝炎のウイルスを持っていないなどの検査に合格した人が対象となります。
また白血球の血液型を一致させることは現時点では必要ないと考えます。


3:この病気を専門に研究している病院があったら是非、教えて下さい

このような血液疾患とくに小児領域の治療は難しく専門の診療科がある病院に行く必要があります。
見つけ方の一つには、大きな病院又は大学病院さらに小児専門病院へ電話をかけ、『血液内科』と呼ばれる診療科があるかを聞き、さらにその血液内科は小児の血液疾患 の治療を専門に行っているかを聞き、これらの条件が満たされる病院が最適と考えます。血液の鉄人が知る限りでは。

虎ノ門病院(東京)・東邦大学付属病院小児科・国立こども病院・東京都内の大学病院があります。
一度大学病院の総合受付へ電話し確認されることをお勧めします。

血液の鉄人

新 医学と切手の極意