医事通信（２０１５年１０月０７日号）
HIVの早期治療を世界保健機関が勧告!!
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2015年９月30日、世界保健機関（WHO）はHIV感染症の治療と予防に関する改訂ガイドラインの一部を先行発表しました。
その内容としては、小児から成人を含む全ての人におけるHIV感染症の治療を「免疫状態（CD4陽性細胞数）にかかわらず， 陽性の診断から可及的速やかに開始する」との新しい勧告となっています。
世界のHIV/AIDSの現状
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今回発表されたWHOの新しい指針で、世界で抗HIV剤を服用すべきHIV感染者に該当する人数がこれまでの
2800万人から3700万人に増加します。
WHOはこれまで、HIV感染者は免疫系の損傷が一定の水準に達した時点で投薬を開始すべきとしてきましたが、一部の治療薬は毒 性が高いことからしてその時点までは投薬のリスクが利点を上回ることが懸念されていました。
WHOの発表によると、最近の治験で抗HIV薬の早期使用が「HIV感染者の生存を維持し、健康を向上させ、ウイルスをパートナーに 伝染するリスクを軽減させる」ことが明らかになってきています。
さらに抗HIV薬はこの数年で改良されており、副作用も少なくなってきています。
新勧告の年齢層
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CD4陽性細胞数がいかなるレベルでも抗HIV薬の使用をを可及的速やかに開始することが明記されています。
前回2013年のガイドライン発行時には，同様の勧告は1歳未満の乳児にのみ適用されていましたか、今回の勧告では年齢や 免疫状態を問わず全てのHIV感染例が早期抗HIV薬の使用の対象となるっています。
新ガイドラインはいつ発表されるのか?
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今回勧告に基づく新ガイドラインは、正式発行時期は2016年に発表される予定です。
今回の勧告が意味することとは?
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今回の新たな勧告は，最近の研究により抗HIV薬の使用開始を遅らせるよりも早期に開始した
方が臨床予後が改善すること，そして第三者へのHIV感染のリスクが減少するといったエビデンスの集積に基づ
き作成されています。
抗HIV薬を早期に投与することのリスクとは?
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以前に米国立アレルギー感染病研究所（NIAID）が世界35カ国で実施した治験によると、米国立アレルギー感染病研究所は
当初の結果で抗HIV薬の早期投薬開始の健康上の利点が明らかにリスクを上回ったことを受け、治験を打ち切ったと報告しています。
更にエイズや重篤な疾患の発症、あるいは死亡リスクは、免疫系がすでに損傷を受けた時点で抗HIV薬の投薬を開始した患 者群と比べ、早期投薬を開始した患者群で53％低かったことも報告されています。
今回のWHOの勧告が意味することとは!!
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その後の治験により、早期に抗HIV薬を使用することにより抗HIV薬がHIVの伝染リスクを著しく低下させ、エイズ発症を食い止める
重要な手段になることが明らかにされています。
今回のWHOの新しい指針は米国などの一部先進国で導入されている現在の慣行と一致しています。
米国では日本と異なり、HIV感染が認められればすぐに抗HIV薬の投与を開始しています。
今後WHOの勧告を進めていく場合の問題点とは
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日本を含めて先進各国の場合、抗HIV薬は潤沢に供給され治療にはさしたる問題は発生しませんが、
発展途上国のHIV感染者に潤沢に抗HIV薬の安定供給が問題となってきます。
WHOの今回の勧告によって、およそ3700万人が投与対象となります。
にも関わらず2014年に抗HIV薬の投与を受けたのは1500万人にとどまっています。
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日本におけるHIV治療の現状
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日本の「抗HIV治療GL（HIV感染症及びその合併症の課題を克服する研究班，2015年3月改訂）では，抗HIV薬の積極的な
治療開始の基準としては、"CD4陽性細胞数500/μL以下"とされています。
抗HIV薬の使用が遅くなればなるほど、心血管疾患などの非エイズ合併症のリスク上昇につながることや、 抗HIV薬の進歩により使用開始を早めるべきとの考えが主流となりつつあります。
日本における早期HIV治療の問題点
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早期から抗HIV薬を開始するに当たっての課題としては，薬の飲み忘れや治療中断による耐性HIVの発現などを防ぐための
服薬アドヒアランスの確保や，長期投与による安全性が確立していないことなどが問題視されています。
更に早期に抗HIV薬を使用することが、一部の医療費助成制度が利用できない可能性があることです。
医療費助成制度が利用できないと、患者の経済的負担は極めて重くなります。
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written by 血液の鉄人
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