血液型と性格判断に関するアラカルト
血液型と性格判断が大流行したきっかけは?
1970〜80年代で、能見正比古氏が『血液型でわかる相性』を1971年に著したことがきっかけとなっています。
血液型と性格判断は今も流行しているのか
現在はその流行もやや下火になった感がありますが、血液型と相性はすっかり日常生活に溶け込んでおり、
「A型は気が弱く神経質」、「O型は自己主張が強い」などと真剣に討論されています。
血液型と性格判断は何時頃から言われているのか?
血液型と性格を関連づけることは、1970年代になって初めて言われだしたのではなく、1930年代にすでに言われていたことを知る人は少ないと思います。
日本における血液型と性格の議論の始まりは、1916(大正5)年に日赤長野支部病院の原 来復氏と小林 榮氏が、日本において初めて血液型検査に基づいた論文
『血液型ノ類属的構造ニ就テ』を医事新聞に発表したのがきっかけとなっています。
この論文の中で、彼らは血液型検査を行う過程で「この人はB型でなかろうかと思いつつ検査をすると、その人はB型であることがたびたびあり、このことから
血液型と性格は関係があるのではないかと、思うようになったが、いまだ不明な点が多い」と述べています。
その後、軍国主義のわが国において、軍医らによって兵隊の血液検査が行われ、その結果に基づいて血液型による兵士の資質分析が試みられるようになります。
その実例とは、
「射撃」ではO型が一番、「体力や機敏性の必要なスポーツ」はO型とB型が、「技術や耐久力の必要なスポーツ」はA型とAB型が優れている等々。
現在、冷静に過去を振り返ってみますと、血液型と性格を関連づけることは、一種の人を差別視する道具として利用されていたのではないかという疑問を抱かざるを得ません。
血液型と性格判断の原型とは?
1930(昭和5)年代の血液型と性格の流行の火付け役となったのは、教育者の古川竹二氏が1927(昭和2)年に発表した論文『血液型による気質の研究』によります。
この論文のなかで古川は、アンケート調査に基づき血液型によって性格が分類出来ると述べています。
これこそまさに1970(昭和45)年代に流行した『血液型と性格判断』の原型そのものです。
古川の論文は各方面に大きな波紋を投げかけ、東京朝日新聞は真っ向から反対する記事を掲載しましたが、金沢医科大学(現在の金沢大学)の初代法医学教室の教授
古畑種基は、競争紙の東京日々新聞(今の毎日新聞)に古川を擁護する反論記事を投稿しています。
東京毎日新聞の古川の『血液型と性格』を否定する記事が、逆に古川の『血液型と性格』を一躍有名にする皮肉な結果となり、さらに当時国際的に活躍していた著名な法医学者の古畑種基教授の支持のおかげで、古川の主張する『血液型と性格判断』は広く一般社会に認められる結果となったわけです。
血液型による性格判断を否定した人は?
当時この様な血液型による性格判断を真っ向から批判した人がいます。
その人は、京都大学法医学教室の小南又一郎氏で、『血液型と性格について論じたことがらは、統計学的処理がされていなく、正しいとは言えない』と反論し、『新聞が血液型と性格についての宣伝をするから問題が起きる』と、当時のマスコミを厳しく批判しています。
血液型と性格判断は科学的に見て正しいのか
現在、多くの心理学者は、「ABO式血液型で性格が異なるとするのは錯覚にすぎない」という立場をとっています。
現在のところ、血液型と性格との間に意味のある科学的根拠は見い出されていません。
科学的に根拠があると主張する人たちの集めたデータはいい加減な集め方をしていたり、統計的な検定に耐えうるものでなかったりして、信用できないというのが心理学者の立場です。
血液型と性格判断は血液学的に見ればどうなのか
ABO式血液型は、ヒトの染色体に乗って遺伝しますが、性格は染色体には乗っていませんので、遺伝することはありません。
むしろ性格は、生まれてからの生活環境に左右されるものです。
また、ABO式血液型は、A型、B型、O型、AB型の四型と多くの人は思っていますが、この
A型、B型、O型、AB型それぞれに亜型または変種と呼ばれる血液型が存在します。
事例を上げますと、
A型には、Am,Ax,Ael,A2,A3,Amh
B型には、Bm,Bx,Bel,B2,B3,Bmh
O型には、Omh,Oh
AB型には、cisAB等など多くが存在します。
仮にABO式血液型と性格判断が科学的に正しいと仮定すれば、これら亜型や変種の性格判断はどの様になるのでしょうか?
ABO式血液型の無い人の性格判断は
特殊な遺伝形式によりABO式血液型のA及びB抗原が赤血球上に存在しないOh(ボンベイブラッド)の人の血液型の性格は、性格がないということになるのでしょうか?
諸外国での血液型と性格判断は
血液型性格判断は、特に日本人の間で広範に普及していますが、欧米では全く相手にされておらず、血液型性格判断は無視されています。
血液型性格判断があたかも常識のようになっているのは、日本と韓国、一部台湾だけで、世界のほとんどの地域では、血液型と性格が関係があるなどという
考え方があることすらほとんど知られていません。
多くの人種の中で、日本人と韓国人だけが血液型で性格が決まるなどということはあり得ないことです。
血液型性格判断は、欧米人にとっては、「一種の差別」としか写っていません。
血液型性格判断は科学的に認められているのか
能見正比古氏、俊賢氏の提唱する血液型人間学は、第三者による検証を一切受けておらず、第三者による科学的検証が可能な形で発表されていないがゆえに、科学的であるとは言えません。
ある科学者が「この仮説は正しい」と主張しただけでは、その仮説は受け入れられず、他の多くの科学者によって検証されることによって、その仮説は正しいとして受け入れられていきます。
written by 血液の鉄人