性器ヘルペスについて
性器ヘルペスとは何ですか?
- 性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(HSV: herpes simplex virus)によって発症する性行為感染症ひとつです。
単純ヘルペスウイルスとは何ですか?
- ヘルペスウイルス科アルファヘルペスウイルス亜科に属するDNAウイルスの単純ヘルペスウイルスで、単純ヘルペスウイルスには1型と2型が存在します。
- HSV-1:口唇ヘルペスに多い病原体で、ヘルペス脳炎の原因となることが多い。
- HSV-2:性器ヘルペスに多い病原体で、ヘルペス性髄膜炎の原因となることが多い。
- 近年のオーラルセックスの多様化により必ずしも、1型2型の分類はされない状況となっています。
性器ヘルペスの感染する場所はどこですか?
- HSV-2と接触した部分に感染します。
- 性行為の場合は性器・肛門、オーセルセックスでは性器・肛門・口唇・喉、キスでは口唇・喉などに感染します。
- 初めて感染した場合には、感染した場所に水疱(水ぶくれ)や潰瘍といったはっきりした症状が出ることがあります。
- 初めて感染して症状が出る場合には、HSV-2に感染してから2週間以内に陰部の水疱(水ぶくれ)や潰瘍といった症状が出現し、その症状は2-4週間で消失します。
- インフルエンザのような症状や、発熱、リンパ節の腫脹が出現したりすることがあります。
- しかし、HSV-2に感染しても何の症状も出ない人もいます。また、気づかないほどの軽い症状であったり、虫刺されや単なる発疹と勘違いされてしまうこともあり、性器ヘルペス感染症の症状が出現する人たちでは、年に何回か(平均的には4回か5回)の、こういった症状の繰り返しが起こることがあります。
感染するとどのような症状が出るのですか?
- 性的接触後2〜3日位で発症し、ペニスの表面や外陰部、肛囲などに多数の小水疱が出現し、潰れて無数の潰瘍状態となり強い痛みを伴います。
- さらに患部近くの神経麻痺を起こす可能性もあり、排尿障害や排便障害などの機能障害を来たすことがあります。
- 足の付け根のリンパ節も腫れて圧痛を伴い、熱が出たり痛くて歩けなくなることもありますが、1ヶ月位で表面的には何とか治まりますが、体内にウイルスは残ります。
性器ヘルペスの感染経路は?
- 性行為、キス、オーラルセックスで感染します。
- 性行為:性器→性器、性器→肛門
- オーラルセックス:性器→口唇、口唇→性器
- 出産時の母子感染母親の産道→新生児
- 手や物を介して:患部→手→性器、口、目など
- 患部に触れないようにすることが重要です。もしも触ってしまった場合は手をよく洗うことが必要です。
- 感染力が非常に強いウイルスなのでトイレの便座や電車の吊り革、サウナや温泉・銭湯などの利用でも感染する可能性が高いです。
- そのことから性的接触の経験のない者でも性器ヘルペスに感染することもあります。
- お風呂などから感染することは、ほとんどないと考えられます。
性器ヘルペスを治療しないとどうなるのですか?
- ウイルスは髄膜にまで達して髄膜炎を起こすことがあり、こうなると、とても強い頭痛がし、尿が出なくなります。
- 何の治療もしないと治るまでには3週間かかりますが、きちんと治療すると1週間くらいで治すことができます。
- 出産時に母親が感染者で、産道にHSV-2を排出していると、赤ちゃんに致命的な感染を引き起こす可能性があります。
- 妊娠中に母親がHSV-2に感染しないことが大切です。
- 仮に、妊娠中に母親がHSV-2に初めて感染したような場合には、出産時に赤ちゃんを感染させてしまう可能性が高くなりますので、出産時に産道に性器ヘルペス感染症の病変が出現しているような場合には、帝王切開による出産を産婦人科医師が選択することがあります。
性器ヘルペスの検査はどのような検査があるのですか?
- 性器周辺に特有の水泡と発疹や浅い潰瘍による痛みや痒みの違和感があることから、診断は比較的容易につきます。
- 診断にはウイルス分離がもっとも確実ですので、病変部からのウイルス抗原の直接証明も簡便で、迅速に結果が得られます。。
- 直接検出する場合は、水疱や潰瘍病変からウイルス感染細胞を綿棒で採取し、スライドグラスに塗抹し、HSV‐1、HSV‐2各々の型特異蛋白を標的としたモノクローナル抗体を用いて、蛍光抗体法による検査を行います。
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- 不顕性感染の場合は単純ヘルペス抗体血液検査で性器ヘルペス感染の検査を行います。
- 日本では、単純ヘルペス1型、2型を特定できる検査法は今のところ使用することが出来ません。
性器ヘルペスの検査はいつ受けたらいいのですか?
- 性行為やオーラルセックスの後など4〜10日間で発症します。
- 以下の症状が見られたら直ぐに受診する必要があります。
- 性器にかゆみがある。
- 性器に赤い水ぶくれが出来る。
- 性器に強い痛みを感じる。
- 性器が熱を持って腫れている。
- 排尿時に痛みがある。
性器ヘルペスの血液検査は、信頼性が低いと聞きましたがどうなのですか?
- 通常用いられる補体結合や中和等の血液で行う血清診断法では、幼少時にHSV‐1に感染している人においてHSV‐1 による抗体の交差反応を除外できないため、性器ヘルペスを診断するのは難しい。
- HSV に対しのて初感染の場合のみ、急性期と回復期のペア血清(2本の血清)で有意の抗体上昇によって診断することが可能です。
- また、HSV‐2 型特異抗体が検出される場合も、2型性器ヘルペスに罹患していると推定できる場合もあります。
- HSV は同一個体において幼少期のHSV‐1感染、青年期以降の性器へのHSV‐1、HSV‐2感染、再発による病変形成といった様々な病態を取り得るので、血液による抗体検査から病態を鑑別するのは困難です。
性器ヘルペスの治療法はどのようにするのですか?
- 治療には、主に「抗ウイルス薬」と呼ばれる薬が使われます。
- 抗ウイルス薬は、ウイルスが増えるのを抑える働きがあり、治療に用いられる抗ウイルス薬の種類には、飲み薬(錠剤または顆粒)、塗り薬(軟膏またはクリーム)があります。
- 症状が出ている場所や程度などにより使い分けられ、また、この他に入院治療の際に点滴が用いられることもあります。
- バラシクロビル 錠剤・顆粒 1回1錠または顆粒1gを1日2回、5日間服用する。
- アシクロビル 錠剤・顆粒 1回1錠または顆粒0.5gを1日5回、5日間服用する。
- 軟膏・クリーム 患部に適量を1日数回、7日間塗布する。
- ビタラビン 軟膏・クリーム 患部に適量を1日1〜4回、7日間塗布または貼付する。
- ※症状の程度などによって、薬の量や服用回数・日数が変わることがあります※
- また、バルトレックスを毎日服用する抑制療法により高確率で再発を防ぐことができますが、費用は月に6000円前後かかります。
- さらにバルトレックスによる再発抑制療法は、パートナーへの感染を数%まで低下させる効果がありますが、バルトレックスによる再発抑制療法は腎臓など内臓器系への負担も大きくなるので、水を多めに補給して内臓への負担を軽減することや、定期的な健康診断を受けるなどの注意が必要となります。
性器ヘルペス検査はパートナーと二人でなぜ受ける必要があるのですか?
- 症状が出ていないときでも、性器の皮膚や粘膜にウイルスが出てきている場合があります。
- 実際には、パートナーへの感染は、このようなときに起こることが多いので十分に気をつける必要があります。
- 疫学調査によると、パートナーへの感染の約7割は、感染源となった方に症状の自覚がないときに起こっていました。
性器ヘルペスの感染は再発しやすいと聞きましたが?
- その通りです。
- 性器ヘルペスの病原体となるヘルペスウイルスは、性行為やオーラルセックスによって接触した性器部分の皮膚や粘膜から侵入しますが、このウイルスは、一旦体内に侵入すると、その後、性器周辺の神経を伝って腰部近くにある腰仙骨神経節に潜伏するといった性質をもっています。
- 現在、性器ヘルペス治療として処方される薬剤には、病原体であるヘルペスウイルスの増殖を抑え症状を軽減させる効果はあっても、神経節に潜伏しているウイルスに対しては効果がありません。そのため、性器ヘルペスの治療を行っても、神経節に潜伏していたウイルスが免疫力の低下などをキッカケに、再び性器周辺部に戻ってきて増殖するため、何度も再発を繰り返してしまうというわけです。
- この繰り返す再発に対し、毎日薬を飲んで、症状が現れる前にウイルスの増殖を抑えられるようにする再発抑制療法が、日本でも行えるようになりました。
- 再発抑制療法は、通常、成人にはバラシクロビルとして1回500mgを1日1回経口投与する方法がとられます。
性器ヘルペスに感染しているとHIVに何故感染しやすいのですか?
- 性器ヘルペス感染者はHIV感染率も高くなる理由は、ヘルペスの潰瘍によって皮膚や粘膜が傷つけられ粘膜の生体防御バリアが破壊されることから、その破壊された箇所からHIVが体内に容易に侵入し感染しやすくなるためです。
性器ヘルペスの感染予防はどのようにすればよいのですか?
- 性交渉において、最初から最後まできちんとコンドームを使用することによって、性器ヘルペス感染症は予防できます。
- また、コンドームにおおわれない部分に性器ヘルペス感染症の病変があるような場合には、予防できません。
- 自分が性器ヘルペスに感染した場合、性交渉の相手を感染させないためには、水疱(水ぶくれ)や潰瘍といった症状がある間は性交渉を控え、無症状のときでもコンドームを使用することが必要不可欠です。
1回の性行為での感染率は?
- 男性から女性では約17%、女性から男性へは約4%で、平均10%と言われています。
- 男女比の感染者割合は、女性感染者の割合が多い傾向にあります
性器ヘルペスの現状は?
- 日本での性器ヘルペス患者数は、年間72,000人と推定されています。
- 性器ヘルペスにかかっている人は、男女とも 20代以降の性的活動が活発となる年代に多くなる傾向が見られます。
- 女性では10代後半から20代、男性では20代から30代でピークがみられます。
- さらに女性では、男性よりも若い年代の16・17歳ぐらいから患者さんが増え始めます。
- どの年代でも男性より女性のほうが多く、女性がかかりやすい病気といえます。
- また、感染者の数は、近年少しずつ増える傾向にあります。
- その原因としては、昔よりも比較的若いうちに性行為を始めるようになり、感染の可能性をもつ人が増えたことなどが考えられています。
- さらに、単純ヘルペスウイルス2型に感染している人のうち、60%は何らかの症状があるのに本人は気づいていないことから、自覚症状がない場合もあり、感染者本人が感染に気がつかないまま、性行為して感染を広めているという現状があります。
感染しやすい状態があるのですか?
- ストレスのあるときや、体調や気分が優れず免疫機能が低下している時には、ヘルペスに感染しやすいので気をつける必要があります。
- 過度のストレスを感じているとき
- 生理時
- 風邪などの体調不良時
何科を受診すればいいのですか?
- 男性 泌尿器科、皮膚科、性病科
- 女性 婦人科(産婦人科)、皮膚科、性病科
- 口腔感染が疑われるときは耳鼻咽喉科の受診となります。
written by 血液の鉄人